『RUSH』は二度観ても十分面白かった / 佐世保事件その後の後味の悪さ
■高2息子を付き合わせて、ロン・ハワード『RUSH ラッシュ/プライドと友情』(2013)のDVDをもういちど観る。息子は今日、台風のための休校で在宅。2度目の鑑賞でも十分面白い。どこがこんなに面白いんだろう。いろいろな意味で完璧。レースの迫真性。緊張がとぎれない画面構成。色彩と音、音楽。ふたりのレーサーの個性の描き分け方。たとえばニキ・ラウダの方は、たぶん、「プライドと友情」みたいなサブタイトルが付くこれ以外の凡百の映画でなら、主人公にもっとも相応しくないキャラクター、もしくは‘悪役’として描かれやすいキャラクターに違いない(一緒に観ていた息子は、ついこのあいだやっぱり一緒に観た『スティーブ・ジョブス』を連想したようで、ラウダ=ジョブス説を唱えていた)。だがRUSHでは、人から好かれようという発想のないこの孤独な天才ラウダが、肯定的に、多面的に描かれる。もう一方のジェームズ・ハントについてもしかり。まぁジェームズ・ハントの方はいかにも破天荒で、破天荒さゆえの欠点と魅力を備えたレーサーとしてアクション系の映画には生来なじみがいいと思うが。この二人のパートナーとなる女性も、それぞれ、いい。二人二様、とても緻密に描かれている。‘善悪’ならぬ、‘好悪’の彼岸。極限まで生きるということの裏表を感じ取らせてくれる映画。映画館で観たかったなあ。
■昨晩なぜかものすごく眠くて早寝したため深夜のニュースを見逃したのだが(そして今朝のニュースは台風レポート一色でTVでは確認できなかったのだが)、昨日佐世保事件の女子高生の父親が自殺していたことを知って衝撃を受ける。時期の近さ、などから、思わず理化学研究所・笹井芳樹氏の自殺が重なって見えてしまう。この二人の男性の「順風満帆な」エリート人生を遮ったのは、若い女子による桁外れの‘蛮行’だった。みたいに。あまりに過酷な「身から出た錆」。それともある種の「呪い」か。かたや実の娘による間接的な「復讐」、かたや無意識の「魔女」によって仕掛けられた罠。
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