嵐の夜に嵐の映画を観る
■「嵐の映画」とは、W・アンダーソン『ムーンライズ・キングダム』(2012)のことです。ウェス・アンダーソン節、全開。絵本のような、寓話のような、独特の世界。どこかディメンションが狂った蛍光パステル色のジオラマ風舞台装置のなかで繰り広げられる、屈折した少年と屈折した少女によるW・アンダーソン流「小さな恋のメロディ」でした。楽しかった。島の警察官ブルース・ウィリスや少年が所属するボーイスカウトの団長エドワード・ノートン等、脇を固める人気俳優たちのとぼけた味もよかった。全体に、次作『グランド・ブダペスト・ホテル』と、思ったよりずっと「近い」感。で、舞台となる島の‘主’みたいなナレーター、真っ赤なダッフルコートを着たおじいさんがこの物語の冒頭であきらかにするように、「3日後に大嵐が来る」ということが、この映画の隠れた主題です(と、勝手に言い切る)。小さな恋人たちの一途で奇妙な愛の逃避行は、この「嵐」へ向かってクライマックスへと上り詰める。たまたまそれと呼応するかのように(って、私がそのタイミングでDVDを観ていたってだけのことですが)、今日は日本列島を台風19号が縦断していたのでした。
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