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2014.09.11

普通の「いい映画」について

朝のニュースで「東日本大震災から3年半」と告げられるのを聞き、とすると今日は「9・11」か、と思う。13年を経過した9・11には一言も言及がない。そういうものか。

マシュー・マコノヒーの体を賭けた演技で話題になっていて米アカデミー賞主演・助演男優賞も取っているジャン=マルク・ヴァレー『ダラス・バイヤーズ・クラブ』(2013)をレンタルDVDで観る。1980年代、エイズが猛威を振るい始めた時期に、少しでも長く生き延びるためにあらゆる手段を講じて無認可の薬物を入手し、違法であることは承知の上で自分とエイズ患者たちのためにそれらを有料で会員に分配する‘ビジネス’を創始した一人のジャンキーの男をめぐる話。エイズが同性愛者の病気だと考えられ酷い差別を受けていた頃、M・マコノヒー演ずるところの主人公の男は、性的志向はストレートなのにたぶん度を超えたジャンキーだったおかげでエイズを罹患した。この、もともとは同性愛者への強い差別意識を持っていた粗野で女好きなジャンキーの男が、紆余曲折・悪戦苦闘の末、自身の内なる差別意識を超えていくところが見所。美しく誇り高い同性愛者でのちにマコノヒーの相棒となるレイヨン(レイモンド)を演じている助演のジャレッド・レトが、いいです。

監督ジャン=マルク・ヴァレーはカナダ人。最近カナダ人監督の活躍が目立っているような気がする。他に『私はロランス』『トム・アット・ザ・ファーム』の新鋭・グザヴィエ・ドラン、『灼熱の魂』『プリズナーズ』『複製された男』のドゥニ・ヴィルヌーヴ。けっこう技巧派の監督ばかり、の感。)

(…とか言いつつ実はこのダラス・バイヤーズ・クラブ、見終わった時点では、まぁよくできた映画だけどそれ以上じゃないね、なんてつぶやいていたわけです。80年代に図書館でパソコン(インターネット)を使って---古っぽい機械だったけれど---調べ物していたの、時代考証的にありうる?みたいに難癖をつけたり。でも、助演のジャレッド・レトがよかった、みたいに思い返しているうちに、なんだか上記のようなサマリーを書いてみる気になってきたのでした。)

いい映画、よくできた映画、といえば。この『ダラス・バイヤーズ・クラブ』とか『それでも夜は明ける』とか『そして、父になる』とか『さよなら渓谷』とか『ペコロスの母に会いにいく』とか。深いテーマ、誠実な描き方、その他いくつも美点を備えている。でも、普通の映画だな、と思ってしまう。よくできた「普通の」映画。表現としての新しさとか存在の核心に迫ってくる怖さとか無類の美しさ・楽しさとかから遠い。言い換えると、私が映画に求めているのは上記の3点ということなのですね。(などと考えていたら、上にランダムに上げた最近の「普通のいい映画」のリストの中では『ダラス・バイヤーズ・クラブ』は他とは違って、「存在の核心に迫ってくる怖さ」に接近していた面がある、と思えてきたわけで。)

このあいだ青山ブックセンターでまとめ買いしたうちの一冊、東雅夫編『幻想文学入門』がきっかけで、「澁澤龍彦」にハマり込んでしまう。際限なきググり&ウィキりめぐり。ググとウィキに向かうと勢い、作品よりも人生、それもゴシップ系の方角に果てしなく検索先が流れていってしまうところが情けない。澁澤龍彦の場合は矢川澄子と澁澤龍子の方へ。矢川澄子2002年71歳での自死を知らなかった。妹が小池一子だということも。1960年代30代の澁澤と矢川、「永遠の少年少女夫婦」という(グロテスクな?!)存在の様態に思いを馳せる。あるいは、「自死」というテーマ。

(10代の頃の私のバイブルは桑原茂夫編『アリスの絵本』。そして「アリス」を象徴する文学的イコンが矢川澄子と金井美恵子だった。

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