ヨコトリ@横浜美術館はとりとめなくも見えた
■横浜トリエンナーレの横浜美術館会場に行く(今回は横浜美術館のみ)。タイトルは「華氏451度の芸術:世界の中心には忘却の海がある」となっていて、ということは「焚書」「忘却」を謳っているわけだが、その奥に「反戦」への連想、意志が作動し、そこがテーマだったと言っていいのだろうか。しかし、もうひとつぴんとこない一群の作品があって、なんだか全体が散漫だったように感じられてしまった。(「ぴんとこない」については、2年前の夏の大阪の国立国際美術館での若手グループ展で感じたのとほとんど同じ。アート作品以前の、がらくた!?にしか感じられない作品群。しかし、デュシャンもウォホールもかつてその時代の既成の美意識にとって「がらくた」であることによって時代を切り拓くアートとなりえたわけで、ということは、今、私の感度が時代についていってないということ???、と、勝手ながらちょっと煙に巻かれたような‘不快な’?気分も味わった。)
■それらのなかで私が面白いと思ったものを、覚え書き風にピックアップします。☆☆大谷芳久コレクション。戦時中の出版物(主に現代詩)。どの作家のものも戦争賛美。瀧口修造も!☆☆エドワード&ナンシー・キーンホルツ。古チェストの上に置かれた旧式テレビ受像機に大映しになっているのは糞をひねり出す尻の立体オブジェ。とか。旧式テレビ受像機をベースモチーフにした奇妙な立体作品いくつか。☆☆アリーナ・シャポツニコフ。今回いちばん好きだった作品:噛んだチューインガムが石の塀かなにかにへばりついているところを撮っただけのモノクロ写真のシリーズ。それらガムの残骸が、それぞれ未知の宇宙人のような、奇怪でユーモラスな「生き物」に見える。同時に、極小サイズとはいえ抽象的な形態の立体オブジェにも見えるわけで、その多義性(!)と、裏で舌を出して笑いたくなるような‘軽さ’の合わせ技が秀逸。同じ作家で、変形した人体の‘部分’を離人症的なオブジェに仕立てているシリーズもあって、それらにも惹かれました。
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