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2010年9月

2010.09.09

2010夏休み映画・その3『ヒックとドラゴン』 / 飛ぶ、飛ぶ!ジブリのDNAを受け継いだかのように

How_train_dragon_320

How_to_train_your_dragon

なにを差し置いても、ドラゴンの背中に乗って「飛ぶ」感覚が、すごくいい。3Dの申し子、みたいな映画です。

「飛ぶ」ことへ向けて、ストーリーおよびディテールが、とても丁寧に生き生きと組み立てられていると思う(見方によっては‘定式どおり’、なのかもしれないけれど)。

たとえば、主人公のヒック(=Hiccup=「しゃっくり」、‘臆病者’を連想させる?)という名の細っこい男の子と、その父、巨大な体躯と伸び放題の髭面が特徴の誇り高き部族の長、ストイックの関係。(母がいないですね。ヒックは母親似だったんだろうなあ。) あるいは、「鍛冶」という、人間ならではの技術が物語の中で果たす役割。(これが隠し味のように効いてくる!)

(↓以下一段落ぶん、映画の冒頭部分のみですが、ちょっとネタバレです)

舞台は、バイキングとドラゴンが絶え間ない闘争を続けている村(一瞬その地形に「風の谷」を連想した)。バイキングの長の子なのにもかかわらず闘うことが苦手なヒックはある夜、得意の鍛冶の技術を駆使して作った装置で偶然、竜の中で最強と言われるナイト・フューリーの子、トゥースを打ち落とす(トゥースは正しくはトゥースレス=Toothless=「歯なし」)。尾翼に傷を負ったトゥースは飛べなくなる。(ヒックがドラゴンの子を仕留めたことに、仲間の部族は誰も気づいていない。)翌朝、打ち落としたはずの竜の子を探しに行ってその居場所を見つけたとき、ヒックは飛べないトゥースを「殺す」こともできた。いや、バイキングの掟では、殺さなくてはいけなかった。が、ヒックにはできない。代わりに、それから何日も何日もかけて、ヒックはトゥースをかくまい、食べ物を運び、鍛冶の技術を生かしてトゥースのために、‘あるもの’を作る。次第にヒックとトゥースの間に、新しい、未知の関係が生まれる。

ちなみに、竜に乗って「飛ぶ」ところだけじゃなくて、対立する異部族(じゃなくて異種生物、か)の間の、抗争から融和・共存へ、という物語の大きな枠組も(←これもちょいネタバレ御免なさい)、確かに、あの3Dの開拓者『アバター』と一脈というか何脈も通じるところがあります(あれ?、アバターの方の到達点は「共存」の数歩手前、あるいは、遥か手前だったっけ…??)。(それはさておき、アバターとヒックドラゴンの‘成功体験’を見る限り、3D映画の可否って、「飛ぶ」みたいな、3Dでこそ飛躍的に感度を増す身体感覚的・‘遊園地のアトラクション’的快感みたいなものにかなり依存する、と確信しました。…って、いまさら、言わずもがなかぁぁ… まぁ、というわけで、何でもかんでも3D化、ってのはたぶん完全に無意味だと思う)

で、テーマに戻ると。この映画を貫く「闘争から共存へ」というモチーフに、米国人観客は今、無条件に感応してしまうんじゃないか、という憶測を抱きました(この種の‘曲解’をしてしまうのが癖なんです。スミマセン)。映画を見ていて思わず、バイキングをアメリカ自身、ドラゴンワールドを異教世界(端的に言えばイスラム)の比喩として捉えてしまう。同時多発テロからもうすぐ10年。自由世界とイスラム世界との葛藤に疲弊したアメリカ。…2年前、アメリカで大ヒットしたけれど日本ではそうでもなかった『ダークナイト』を思い出しました。『ダークナイト』では、「正義の味方」である主人公の存在そのものが、バットマンというヒーローの両義性をめぐって、繰り返し、深く、疑われる。そのことが、解決されることのないヒーロー自身の‘苦悩’として描かれる。ヒーローになることが大好きなアメリカ人の皆さんも、今、こんなに苦しんでるんだなー。と、そう思って見てしまった。

…ですけどね。いよいよ、ヒックドラゴンの大団円に向かって大きくネタバレしてしまうので、未見の方はここ以降、スルーしていただきたいんですけど、私は、終盤に向かって見えてくるこの映画のもう1レベル大きな構図が、いまひとつひっかかる、というか、「甘い」「違う」と思ってしまう。子供向けのエンタメ3Dアニメにそんなこと言う自分を、しょうもないなー、とも思うんだけど。実はドラゴンたちも、諸悪の根源=ハイパードラゴンの犠牲者であって、好んでバイキングたちを攻撃しているのではなかった。大団円において、今まで見損なっていた息子ヒックに導かれ、父にして長であるストイックも‘真実’に目覚める。ここにバイキングとドラゴンが一致団結、協力しての「最後の戦い」が始まり、強大にして邪悪そのもののハイパードラゴンがとうとう‘退治’される。バイキングとドラゴンは和解し、めでたしめでたしのハッピーエンド。…というその構造の、「諸悪の根源」=ハイパードラゴンの存在が、気にくわないんです。対立の根源は、対立する二者の「外」にある、とする、そこが甘くてイヤなんです。対立の根源は常に、対立する二者自身の「内」にある。それを乗り越えることがいかに難しいか。…そういったことを見えなくしてしまう‘甘さ’が気に入らない。

…と、苦言を呈してみたものの。。しかし実は、この‘ハッピーエンド’には苦い苦い隠し味が仕込んであって、それはほんとに胸に突き刺さるし、思わず涙がこぼれてしまう。子供向けの映画にしては、なんて深い知見。

というわけで結論は、楽しくて、しかも懐の深い、いい映画だったのでした。拍手。

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ヒックとドラゴン

原題 How to Train Your Dragon
2010年アメリカ映画/2010年8月日本公開
監督・脚本 クリス・サンダース、ディーン・デュボア
出演(声) ジェイ・バルチェル(田谷隼)、ジェラルド・バトラー(田中正彦)
公式サイト / ヤフー映画 / eiga.com / IMDb / RottenTomatoes
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余談1)
夏休み終わって1週間以上たってるのに「夏休み映画」って、この間抜けさ加減をどうぞ笑ってやってください。ちなみに、<夏休み映画・その1>として『借りぐらしのアリエッティ』、<夏休み映画・その2>として『トイ・ストーリー3』について書いてます。よかったらそっちも読んでみてください♪

余談2)
先週の映画の日に、『カラフル』観に行って来ました。これはこれでいい映画だし、特に観終わって家に帰って寝床に入って眠りにつこうとしている瞬間とかに、思わずその内容を反芻してしまうような、どこかボディブローが効いてくるような種類の映画だったんだけど。。でも実は、これ、「高評価されすぎ?」、って思ったんです、観終わったとき。原恵一監督、というだけで応援票が付いてきてる?、ってわけじゃないとも思うんだけど、アニメーションとして、テクニカルに、稚拙な映画じゃない?、って思ってしまった。ヤフー映画のユーザーレビューで『アリエッティ』に星5つ中3つ、なんていう採点をしてしまった自分は間違ってたかも?、って思った。だって、純粋にアニメーション映画としてみるなら、いろいろ私も難をつけましたけれど、ジブリのアリエッティは第一級。それに比して、『カラフル』の場合、そもそも実写じゃなくアニメで撮った必然性って、なくない?、って思ってしまった。中学生を集団で扱った実写の『告白』、まぁ内容は『カラフル』とは水と油みたいなもんで、最近の似た映画、みたいな感じで引き合いに出すのも牽強付会の極みではあるんだけど、『告白』の映画としての完成度の高さに比して、『カラフル』はいかにも邦画的な、発展途上のぬるい感じが漂ってた(…といっても、私自身『告白』が好きかというとそういうわけでもなくて、どちらかを取れ!って強制されたらもしかして『カラフル』の方を取るかもしれないんですけど。。) …あ、なんかほんとに余談、ですね…

余談3)
タイトルに「ジブリのDNAを受け継いだかのように」なんてフレーズを組み込んだくせに、本文でジブリにほとんど言及しなかったことに、今、気が付きました。ジブリについては、もうほとんど終了間近の子育ての過程で、飽きるほど何回も何回も何回も繰り返し子供たちがジブリ作品のビデオ(DVD以前だった期間も長い!)を観るのに付き合ってきた関係上、実は私、何を見てもジブリのあれこれを連想してしまうような「ジブリ病」というべき病を患っているんです。新しい映画なら、あ、ここ、ジブリのあれに影響されたな?、とか、古い映画なら、あ、宮崎さんこれからここ拝借してたんだな、とか。で、そういう目で見ると、アバターなんてもうジブリオンパレードだったし、このヒックドラゴンについていえば、初めてヒックがトゥースに乗って空を飛ぶところ全般、墜落しそうになってまっさかさま、ってあたりなんか特に、あ、ラピュタじゃん、って思った。ドラゴンとヒックの関係に、王蟲とナウシカを見た、とレビューに書かれていた方もいらっしゃいましたが、ほんと、その通りだと思います。ああ、ジブリは偉大だった。(って、おざなりな‘締め’で申し訳ないです・・・)

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