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2010.08.30

2010夏休み映画・その2『トイ・ストーリー3』 / ふぞろいなオモチャたちと人間のオープンエンドな深イイ話

Toy_story_3_3

一見したところつるっとした質感で、ぴかぴかしていて(近寄って見れば年月のキズが無数についているかもしれないんだけれど)、陽気で、かといって平板ではなく奥行きと陰影を備えていて、喜劇と悲劇がそれぞれなんたるかを知った上で内蔵までしていて、しかしそれに溺れることなく抜群のバランス感覚を保ち、あぁこういうのを全能、っていうのかなあ、と、溜め息みたいなものが出ます。唐突かもしれないけれど、「市場経済」の全能な感じと、この三作目で完結した「トイ・ストーリー・トリロジー」の全能な感じは、ちょっと似ている気がする。アメリカ的な万能感、って言っちゃうと簡単なのかな。…とてもかなわない。

ウッディ、バズを始めとするレギュラー陣のキャラ立ちは相変わらず秀逸なのですが、今回はそれに加え、ゲスト陣とも言うべき「サニーサイド保育園組」がなかなか奥深い。いちごの香りのするピンク色の大きなハグベア、ロッツォに、人間の赤ん坊とおんなじ大きさのミルクのみ人形、ビッグ・ベビー。ロッツォのどこか薄汚れた体の色とビッグ・ベビーの開かない片目がちょっと不吉な予兆みたいなものを感じさせるのですが、案の定、この二体が、‘純アメリカ的’にして楽天的な(はずの)オモチャたちの物語の中に呼び込む‘世界の闇’は、意外なほどに救いようがなく、暗い。ま、ウッディたちは仲間の結束と持ち前の前向きなパワーでそれらを乗り越え、自分たちの‘未来’を獲得していくんですけどね。

オモチャたちの持ち主・アンディ君が大学に入学して家を出ることになった。さて、オモチャたちの運命は?・・・で始まるトリロジー完結編「3」、どこかで、「ハリウッド史上最高の‘脱獄もの’のひとつになるだろう」、みたいなレビューを読んだ気がするのですが、スリル満点のアクション映画としてもよくできていると思います(これってトイストーリー・シリーズの伝統技でしたね)。もちろん、子供から大人への成長の物語、出会いと別れ、‘愛’の物語としても。

そうそう、サニーサイド保育園組のゲスト陣で言えば、バービーちゃんとベストカップルとなるケンくん、忘れちゃいけないですよね。笑わせてくれます。ついでに、保育園組のオモチャの面々。ロッツォに支配されていた頃と、映画のエンディングロールのオマケで垣間見られる‘その後’では、すっかり人が(オモチャが?)変っちゃっているところがなかなかいい。‘この世の不幸’だけでなく、人(?)というものが持って生まれた‘浅薄さ’までも、こんなふうにさらっと、陽気な物語のなかに織り込んでしまうPIXARのセンス、なんかすごいなぁ、と、私は素直に感心しました。

最後に。この「3」は、「人間の物語」「人間とオモチャの物語」「オモチャたちの物語」が互いに響き合いつつ重奏しているその響き合い方が、とても心地よかったです。未来に向かって開かれた、ふくらみと余韻のある終わり方も。大人も子供も楽しめる永遠の‘定番’として、「トトロ」とこの「3」が双璧、になるんじゃないかな。

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トイ・ストーリー3

原題 Toy Story 3
2010年アメリカ映画/2010年7月日本公開
監督 リー・アンクリッチ
製作総指揮 ジョン・ラセター
出演(声) トム・ハンクス(唐沢寿明)、ティム・アレン(所ジョージ)
公式サイト / ヤフー映画 / eiga.com / IMDb / RottenTomatoes
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余談1)「深イイ話」って、この名のバラエティ番組、私、視聴したことないのにタイトルに流用してしまった。ズレてるかも・・・

余談2)「夏休み映画」を、夏休みが終わろうというこの時期に書き込む間の悪さ・・・ 先送り人間の悲しい性です・・・・・ なんと「夏休み映画・その3」として、『ヒックとドラゴン』も書くつもりでいるけど、明日が8月31日だったのでは?!?? 小学生に戻ったような気分です!?(…3本とも1ヶ月くらい前に見てたのに…)

余談3)過去の名作映画へのオマージュで溢れているところも、トイストーリーの魅力のひとつですよね。「3」について言えば、冒頭の「西部劇」のシークエンスや、ビッグ・ベビーの首が180度回ったところが秀逸だった! そうそう、シリーズ第一作が公開された頃、ウッディが「クリント・イーストウッド」、バズが「アーノルド・シュワルツェネッガー」へのオマージュで造形されている、と、映画評や紹介文などに書かれているのをよく見かけた(ような気がする)し、もはや私には2体のキャラはそういうふうにしか見えないんだけど、最近はそういう言及は見かけませんよね?(常識としてすでに皆がそう見てるからかな??…)。それにしても、トイストーリー第一作公開時、後にウッディ=クリント・イーストウッドがここまで大監督になることや、バズ=シュワちゃんがカリフォルニア州知事になることなど、誰も予想だにしなかったろうに・・・ 月日の流れを感じます。。

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